エスハポンインタビュー | マドリードIEビジネススクールMBA留学生:足立幸太郎 × 松岡未季 × 稲葉喬
アントレプレナー向けプログラムが特に充実していると有名なマドリードのIEビジネススクール。
ここには毎年複数の日本人留学生がMBA取得のためにやってくる。
世界に数あるビジネススクールのなかで彼らは何故ここを選んだのか。彼らが今後目指すものは?
留学期間終了直後の3名の日本人MBA留学生に、彼らの思いを聞いた。
左より稲葉喬さん、松岡未季さん、足立幸太郎さん
まず最初に皆さんの御経歴を教えて頂けますか?
足立幸太郎さん(34歳)
学生の時にベンチャー企業にインターンで入り、海外事業を志望して正社員として入社し、その後海外事業部としてロシア向けの輸出、中国からの家具の輸入を行い、その後事業責任者としてフィリピンに進出して2006年から足掛け7年仕事をして来ました。最終的には現地に支店を13店舗程設置し、事業としては成功だったと思います。フィリピンではトッププレイヤーがほとんどMBAを持っていることにも刺激を受けて、自分のビジョンとも合っていたので、一度仕事を離れて留学することを決めました。
松岡未季さん(30歳)
大学院まで都市計画を学び、行政の面から良い街をつくるという構想が気に入って野村総研でコンサルタントとして6年間程働きました。お客様は国交省、経産省、外務省他で、政策提言をしたり、実際に民間企業と一緒にスマートシティの実証実験や、地震に対する防災計画作成等も行いました。MBA留学のきっかけになったのは、2011年の大きな地震災害を見て自分の本当にやりたい事をやってみたいと思ったのと、2010年頃から観光関連の事業に携わった時に、自分で一番ワクワク出来るテーマだと感じてその分野で起業してみたいと思ったことです。
稲葉喬さん(32歳)
日本発の面白いことをやりたくて新卒でソニーに入社し、7年間働いていました。主に新事業を立ち上げる部署にいて、最後の2~3年は何十か国かを巻き込んでソニーのプレイメモリーズというクラウドのプロジェクトを推進しました。2009年頃から提案して、2012年にグローバルローンチを行えました。その後もう少し勉強をしたいと思いMBAを取るために会社に申請して会社派遣で留学に来ました。
皆さん既にそれぞれお仕事をされて来ている訳ですが、ビジネススクールに来ると言うことは一旦退職されるか、或いは休職されて来られることになる訳で、人生の上での大きな決断だと思いますが、そこまでしてビジネススクールに来られてMBAを取得されようと思ったきっかけはなんですか?
松岡さん
入社したころは快適な住環境や良い社会を作りたいと言う熱い思いがあり、6年程勤めて仕事も順調でしたし、コンサルとしての仕事も好きだったのですが、基本的に案件を作り上げてお客様にお渡ししてしまうと私の仕事は終わってしまい、実現しないプロジェクトも多く、世の中を変えることに余り貢献出来ていないなと感じるようになりました。そして実際に世の中を変えるのは実業なのでそのための修業をしなければと思い、一般的な実業のスキルだけでなく、アメリカ人や中国人とケンカも出来る位の能力が欲しい(笑)と思いました。また、夫がちょうどMBA留学のための社内選考に合格したので、行くなら同じタイミングでと考えて決めました。
稲葉さん
エレクトロニクスの業界は日本を支えて来たものの一つだと思うのですが、それが根本的にやばいぞと今思っています。おいしいところはグーグルやアップルに取られており、安い部分は中国や台湾に取られていて、抜本的にビジネスを変えて新しいことをやらないと5年後、10年後はないんじゃないかと感じました。その際に自分の業界にいるだけではなく、外に出て、車なのか、別の業界なのか、次のソニーや日本を支える産業を作る能力をつけたいと思いました。またこれまで海外の人達と仕事をして、やはり一筋縄ではいかないなと感じていましたので、世界の共通言語であるMBAを取得して、帰ってまたグローバルプロジェクトを率いて行きたいと思いました。
足立さん
私の場合は今まで働いていた会社は休職扱いになっています。基本的には卒業後は起業したいと思っています。
留学しようと決心されてから、実際に留学を実行するまでにどの程度の期間が必要でしたか?
足立さん
フィリピンに着いた時に思い立ったので7年間程考えていましたが、実際の準備は2年間程度でした。もともとはアジアで起業しようと思っていたのでアジアの学校を調べていたのですが、丁度欧州でも金融危機があり、円高が進んだことから、欧州の学校も狙えるなと考えて方向転換したと言うのもあります。2年間勉強して受験しました。 TOEFL、GMAT、面接の三つの関門があり、TOEFLとGMATで一定の点数に達しないと面接に辿り着けないので、しっかり受験勉強をしました。
松岡さん
その受験勉強が大変なんですよね(笑)。行こうと思ったのは2011年6月頃で、それからいろいろな学校のことを調べ始めたのですが、アントレに興味があったのでIEは面白そうだなと思いました。でも忙しすぎて受験勉強は最後の1年位で集中して行いました。私の場合は、面接はIEの日本オフィスで行いましたが、卒業生の方と面接する場合もあるようです。
足立さん
私の場合は、面接はフィリピンでやりましたね。フィリピンにはIEのオフィスはないのですが、東南アジアを周っていらっしゃる担当官の方がいらっしゃいました。
稲葉さん
先ず会社内で仕事の実績と英語力での選考基準があり、2年位前から業務の傍ら勉強をして社内の選考を通って、その後1年程準備をして来たという感じでしょうか。
世界には沢山のビジネススクールがありますが、MBAを取得されようとした際に、何故マドリードの IE Business School を選択されたのですか?
足立さん
私はフィリピンにいたわけですが、フィリピンとスペインの繋がりの影響で、会った人にたまたまスペイン系の人が多かったですね。フィリピンの人というのは、留学する場合アメリカの大学に行くか、欧州だとスペインの大学に来ることが多いようです。いろいろなイベントへ行くとスペインの大学出身の人達が多くて皆さんとても能力が高い。ということで欧州の学校へ行くならスペインだと思い、個人的に留学への気持ちが高まったというのが大きかったと思います。
松岡さん
私費留学なので1年制と言うのが魅力だったのと、アントレに強い点。それからダイバーシティが高い点。アメリカだとクラスメイトの半分以上がアメリカ人だったりして偏りがあるんですね。アントレと言うことでケンブリッジも一度事前に訪問したことがあるのですが、お会いした人達が余り面白くなくて。こういう言い方をすると失礼になってしまうんですけれど、留学されておられる日本人は社費で来ている方が多くて、人生の休暇に来ましたみたいな人もいらっしゃって。
それからアントレと言ってもテクノロジー系が多くて確かにスタートアップも多いのですが、自分は技術系ではないので違うかなと。IEには、受験する年のゴールデンウィークにマドリードまで来てスクールビジットを行ったんですが、IEで会った人達はとても面白くて、こんな素敵なコミュニティーの一員になれるのだったら行く価値があるなと感じてモチベーションが高まり、それでIEに決めました。年によっても違うとは思いますが、日本から来ている人達でも、昨年度と今年度は話していても面白い、刺激を与えてくれる人が多かったですね。
足立さん
IEはなんだか自由な感じなんですよね。 私もフィリピンで50人位の卒業生に会いまくりましたが、最終的に人と会ってみてその印象がどうかと言うのが重要だと思います。
稲葉さん
一つはインターナショナルな学校に行きたかったというのがありますね。アメリカの学校のオファも貰ったのですがその生徒の6割はアメリカ人だったり、アジア人が多かったり。IEの場合は生徒が60ヶ国から来ていたりする環境が魅力でした。
それからソニーの先輩でIEで勉強された方がいて、その方からIEの先生や生徒に関するいろいろな面白い話を伺って、新規事業に強いと言う話も聞きIEに行きたいと思うようになりました。
IE Business School での毎日の勉強のプログラムはどのようなものでしたか?
稲葉さん
私の場合は9時から11時が授業、11時から1時間グループワークがあって、13時から15時までまた授業があり、そこでランチを食べて16時から18時までグループプロジェクトをやると言う感じでしたね。私の場合は家族と2歳の娘が一緒に来ているので、そこで一旦家に帰って21時頃までは家族と過ごして、それからまた予習のために学校へ行って2時、3時頃まで予習をして帰宅して寝て、翌朝7時に起きて、という毎日でしたね。
松岡さん
コアタームとエレクティブタームというのがあって、11月に入学して7月頃までのコアタームの期間は本当に忙しく、私の場合は10時から授業だったのですが、9時から10時はグループワークがあって、冬だとまだ暗い時間に泣きそうになりながら朝学校へ行っていましたね(笑)。そして予習が必要なので毎日の睡眠時間は4~5時間で、仕事をしていた時もそうでしたけど、仕事とはまた違うプレッシャーでした。それからスペインはランチの時間が遅くて、最初はそれに慣れるのが大変でした。今はもう体がそっちに慣れちゃいましたが(笑)。
足立さん
私もほぼ同じで、毎日深夜2時頃まで勉強する感じでした。私の場合は夏休みにインターンシップをやったので、その期間に抜けた授業がその後に押し込まれて引き続き忙しく、最後までずっと深夜2時まで勉強のパターンが続きました。
IEで勉強をされていてどのような点が良かったですか?
稲葉さん
アントレに強い学校なので、とくにエレクティブのクラスで、本当に一流の起業家が教授として来てくれる点は良かったですね。アメリカでベンチャーキャピタルをやって成功された方とか、英国や日本で活躍されている方とか。そういう人達と学問の話だけではなく、どうやって新しいビジネスを見抜いて、どういう判断で投資しているかとか、彼らの経験について話が聞けて、最後は個別の人生相談にも乗って頂いたり。こういう機会がなければ恐らく一生出会えなかった人達と一緒に過ごせたのはとても有意義でした。
松岡さん
エレクティブクラスの一環でベンチャー・ラボと言うコースがあって、自分たちの起業アイデアを練る時間があり、11月にピッチがあって、そのために自分のビジネスのアイデアを練れたのが有意義でした。手取り足取り教えてくれるというのとはまた違いますが、普通の授業を取っていたらとても忙しかったところを、自分のアイデアの作成に集中出来たと言うのはとても良かったと思っています。残念ながら最終ピッチには残れなかったのですが、ベンチャー・デイというのが世界各国で行われていて、東京でのベンチャー・デイには選んで頂けたので、帰国してそのピッチには参加する予定です。
足立さん
世界60ヶ国にまたがる教授や卒業生のIEのネットワークが自分のものになったのは大変大きいと思います。インターンシップをする際に国外のIEの人達と連絡を取ったりしたのですが、皆とてもオープンでメールを出したら気軽に返事をくれますし。知識だけの話をすれば1年間で吸収出来るものは限られていますが、今後このネットワークを借りて何か出来そうな気がしますね。特に日本人が余り行っていないような南米関係とか、将来何か出来ないかなと思っています。
松岡さん
特に南米には大きなチャンスがあるような気がしますね。
稲葉さん
直近ではソニーを通じて大きなインパクトを起こしたいですね。そして小さなビジネスを大きくすることを学んだので、中・長期的には小さなビジネスを大きく育てて行く仕事に携わりたいです。具体的にはベンチャーキャピタリストをやってみたいですね。一つの事業を広げるというよりは、成長の種をどんどん捲いて行って、多くの新しい仕事を作っていくというのに魅力を感じています。
松岡さん
起業しようと思っていまして、現在ビジネスパートナーといろいろな準備を行っています。会社の登記は恐らく4月頃になると思いますが、特にアッパーミドルクラスのヨーロッパ人やアメリカ人を日本に連れて行き、日本の地方で弟子体験をして貰うと言う企画を進めています。最初は2〜3日の短期のプログラムから始めて、将来的には1週間程の期間でやりたいですね。今そのプロダクトデベロップメントやマーケティングを行っているところで、野望としては東京オリンピックの頃までに成長させて、売却して次のことをやるというのが一つのベンチマークです(笑)。
足立さん
私も独立の方向で行こうと思っています。事業内容的には、日本の労働力不足を、職がなくて困っているフィリピンの労働人口と上手くマッチングさせて解決することが出来ないかと考えています。最初はアウトソーシング出来る仕事をフィリピンで行うところから始めて、将来規制緩和が始まると思うので、フィリピンの人達を言葉や文化の障壁をトレーニングによってクリアして、建設や飲食の分野で日本に渡ってもらう形が作れればと考えています。その他ではeコマースもやりたいと思っています。
日本でMBAを取得する為に留学しようと考えている人達に対して、一言アドバイスを頂けますか?
稲葉さん
自分の直感を信じることが大事ではないかと思います。ウェブの情報だけではなくて、その学校の関係者や卒業生に会って、自分が一番これはと思ったところに行くのが良いと思います。そういう意味でIEは自分でそう感じて来たところですし。マドリードの街も素晴らしいですし、IEは何かやってやろうと言う人も多くて、お薦めしたいですね。
松岡さん
MBAで学べることは日本でも学べると考えておられる方も多いと思いますし、知識だけであれば正にそうだと思います。ただその先のインタラクションや、外国人との戦い方とか、ラテンの方達も本当に優秀なので、自分の価値の出し方や戦いの作法はやっぱり海外に出ないと学べない。IEだとラテン流もアメリカ流もインド流も全部学べるので、それだけでも来る価値があると思います。
足立さん
MBA全般の話になるのですが、MBAは取得にかなりの費用が掛かるので、自分でもきついなと思いましたし、やっても大丈夫かなと思いましたが、やっぱり来てみると来てよかったと思いますし、ちょっと無理してでもやった方がいいですよと皆に言いたいですね。やらずに将来後悔するのも勿体ないですし、やってみると人生を変える機会になるので。
松岡さん
やってみると人生が変わりますね。
足立さん
そうですね。会う人も変わって来ますし、いろいろなチャンスの話もやって来ます。日本人は保守的な人が多いので、家庭があるからとかいろいろな理由がある人もいるとは思いますが、思い切ってやってみられたら良いと思います。
稲葉さん
ご家族連れにもお薦めしたいですね。私の家内はもう帰りたくないって言っていますし(笑)。
三人三様、それぞれの思いを胸に抱きながらのMBA留学。楽しかったことも、人には言えない困難もあったことだろうと思います。
ESJAPÓN では、足立さん、松岡さん、稲葉さんと、その他にも沢山いらっしゃる人生に挑戦する日本人の皆さんを応援しています。どうか頑張って下さい!
IE Business School : http://www.ie.edu
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