Jun2016_Makiuchi

 
2年以上の間在バルセロナ総領事を務められた牧内博幸氏より、日本への御帰任を前に離任のご挨拶を頂きましたので、ここにご紹介させて頂きます。

 


 

在バルセロナ総領事館の友人の皆様へ

 
 私は、約2年2ヶ月のバルセロナ勤務を終え、6月末日に日本に戻ることになりました。短い間でしたが、皆様には大変お世話になりました。この場をおかりしてお礼申し上げます。
 
 バルセロナは92年のオリンピック以来、色々な面で恵まれた国際都市として発展してきました。日本人の皆様にとってはガウディ、ピカソ、ダリ、ミロ、バブロ・カサルス等の多くの芸術家を輩出した都市として知られていますが、最近は錦織選手のバルセロナ・オープン二連覇、フィギュアスケートの羽生詰弦選手のグランプリ・シリーズ二連覇、大野和士氏のバルセロナ交響楽団音楽監督就任、佐藤彦大氏のマリア・カナルス・ピアノ・コンクール優勝、日建設計のバルサ・サッカー・スタジアム設計落札等々、多くの日本人関係者が活躍している都市ともなっております。
 
 カタルーニャ州には約200の日本企業がありますが、企業の方々が投資環境調査のために当地を訪れるような場合、私は常に、カタルーニャには8つの良い点「8C(Catalunya)」があるとして積極的な投資等を勧めてきました。
一つ目は、「地の利」である西欧の「中心地」(Center)、観光にとって重要な「海岸」(Coast)、長い歴史を通じて築かれた美しい「街」(City)、四つ目はカタルーニャ州の約60に及ぶ星付きレストランに象徴される美味しい「料理」(Cuisine)、 第五に高い水準の絵画、音楽、建築の「文化」(Culture)、地中海の温暖な「気候」(Climate)、世界トップ・クラスのMBAスクールや大学を背景とした優秀なカタルーニャ人 (Catalan)、最後に、人間の塔 (Casteller)に代表されるカタルーニャ人の団結心です。
 
Jun2016_Castellers特に、最後の人間の塔は、約200年にわたりカタルーニャ地方で行われている行事ですが、写真にもありますように約600人前後の人間の塊で最高10段の塔を造るというものです。これには長期の厳しい訓練や忍耐を要しますが、これからも分かるようにカタルーニャ人の団結への意識は非常に高いと言えます。
是非、このような素晴らしいカタルーニャに投資、観光のためこぞって訪問頂ければと思っています。
 

 
 皆様ご存じのように、総領事館の役割には、日本人の皆様の安全・安心のための各種活動と企業の皆さんの事業環境の向上等がありますが、私はこの約2年2ヶ月の間に、特に、三点、学術・文化関係の強化、中小企業支援、日本への投資(訪日観光客)の促進を念頭に活動して参りました。
 
 この間に日本人の皆さんの希望でもありました「日本協会」の設立が可能となりました。また、「バルセロナ社長会」という団体が「日西経済同友会」として再出発出来たことや、「夏祭り」が規模・質ともに充実してきたこと、さらに、コルネジャ市の「数学博物館」の活動が徐々に強化されていることは、本当に良かったと思っています。是非、皆さんの力をおかりしてこの日本協会を盛り立てて頂き、日本とカタルーニャの友好関係を象徴するような団体に築き上げて頂ければと、切に願っています。
 
 「バルセロナ社長会」は日本人ではない方が社長を勤められる日本企業グループですが、昨年9月に「日西経済同友会」として発足しました。カタルーニャ州以外の日本企業以外の企業も募りつつ新たな活動を始めたことは、将来のスペインを代表する「日西商工会議所」の設立に向けた良い走り出しだと思っています。是非、当地在住の日本人及び日本企業の皆様、更に、日本の皆様には、暖かいご支援をお願い致します。
 
 「夏祭り」につきましては、将来的にデュッセルドルフの「日本デー」のようなお祭りになれば、と考えています。幸い、バルセロナ市の力強い支援を受けて毎年質・規模ともに大きく向上しています。第4回目を迎えた今年は、日本政府の協力による和太鼓の演奏の他、徳島からは阿波踊りの皆様約20人と多くの投資家の方々が駆けつけてくれました。これからも是非、日本企業の皆様他、多くの方々のご支援を頂きたいと思っています。
 
Sep2015ESJAPON_CEJ_5
 
 ここで、皆様には馴染みの少ない「プラン・ハポン」についてお知らせしたいと思います。
2009年にカタルーニャ州政府は日本のみを対象とするプラン(日本が第1号、次いでモロッコ)、「プラン・ハポン」を組織し(企業活動、観光、大学・研究、文化のワーキング・グループ (WG)で構成)、これまでこの4WGを通じて日本との関係強化を図ってきました。今後は、何らかの企画を検討される場合は、このWGの枠組み内で行うと効果的に実施できる可能性があります。是非、ご検討頂ければと思います。
 
 「数学博物館」につきましては、アメリカ合衆国のSTEM計画が数学の重要性を示していますが、将来のテクノロジー・デジタル社会の基本となる数学を「楽しく一瞬にして理解する」ことを目的に構成されています。この博物館がスペイン以外の多くの地域でも開館されれば、これからの子供たちの知的好奇心や能力開発の向上にとって非常に有意義だと思っています。是非、皆様の厚いご支援をお願い致します。
 

 
 ところで、皆さんはきっと、カタルーニャの独立についてご心配されていると思いますので、簡単にご説明します。
歴史的にカタルーニャ地方は独立機運の強い地域として知られていますが、一方で、この地方は市民戦争等で多くの犠牲者を出したことから、反戦意識の高い地域でもあります。イラク戦争やマドリッドでの列車爆破事件(2004年)等の時は大きなデモ行進を以て強く平和を訴えてきたように、カタルーニャの人々は何があっても戦争はしないという強い意志の持ち主ということも出来ると思います。
 マス前州知事やプチダモン現州知事等の政府の要人の方々の何れも、独立運動は強く進めるが常に法に則って進めると言明しています。これら発言はカタルーニャにおいては武力を伴う独立運動はしない、ということを示していると考えています。
 実際、7百万の人口のうち真に独立を求めているのは多く見積もっても3割程度と言われていますが、今後、経済が上向き、中央政府との関係が修復するようになれば独立への機運は静まるとの見方が一般的です。
 

 
 さて、最後になりますが、総領事館では今後とも、サロン・デ・マンガ(毎年20万人近く入場する欧州第二の規模のマンガ展)や講演会等、各種文化事業を通じて日本とカタルーニャ州の友好発展と相互理解のために努めて参りますので、皆様におかれては、これまで以上のご支援を頂ければ幸いです。
 
宜しくお願いいたします。
 
2016年6月
在バルセロナ総領事 牧内 博幸