Mar2015_StartupVisa_jpn

 

 
スペインで事業を起こしたいが会社の設立は如何したら良いか、労働ビザの取得は難しいのだろうかとか日本人の方から以前にも増して質問が多く来る様になった。
飲食業で起業したいと言うのが大半である。なかなか夢を持ち難い日本に比べて外国、特にスペインは明るい希望を持たせてくれる何かがあるのでろう。

一方2013年9月23日に官報で公布された法律第14号特に所謂スタートアップビザに関する記事が色々な所で出でいるのでスペインでの起業に興味を惹かれるのだろう。

他方、どんな内容でも起業する意思さえあればスペインに進出できると考えるのは間違いだ。
スペイン政府もその様な目的でこの法律を作った訳では無い事は明白だ。スペイン政府にとっては海外の起業家がスペインで投資をする事で雇用が創出されスペインでの失業者数が一人でも減る事が重要である。

 
日本の企業家の方の夢とスペインの現実を上手く結び付けられる様に先ずは当該法律特にスタートアップビザについて規則面から概説してみたい:

当該法律の第5章に “スペイン経済の国際化” の項目があり、それは以下の様に第1区分と第2区分とから成り立っているがその中の第2区分の「国際的な移動」新たに労働許可を与える可能が述べられておりその一つに起業家についての規定がある。

第1区分 国際化の促進

第I 章 国際化促進の戦略 50条-51条
第II章 商業上及び企業支援の手法と組織 52条-54条 
第III章 財政上の支援の手法と組織 55条-58条 
第IV章 国際化のその他の支援の手法と組織 59-60条

第2区分 国際的な移動

第I 章 入国と滞在の簡素化 61-62条
第II章 投資家 63-67条
第III章 起業家と企業活動 68-70条
第IV章 高度な技術を持った専門家 71-72条
第V 章 出向 73-74条
第VI章 許可手続きに関する一般規則 75-76条

 

 
それでは第III章の起業家の規定を詳細に見てみたい:

1年間有効の査証を貰い企業活動を開始するに必要な手続きをする事が可能である(第68条1項)。

その後企業活動が実際に開始する事が出来ればそのまま居住許可を申請する事が出来しかも新たに査証を申請する必要も無い(第68条2項)。

居住許可の申請が必要である(第69条1項)。

居住許可の申請者は第62条の一般要件を満たしている必要がある(第69条2項)。
この一般要件とは以下の通りである:

* スペイン領域内に正規でない形で滞在して居ない事
* 年齢が18歳及びそれ以上である事
* 無犯罪証明書が入手できる事
* スペインで認可されている保険会社の医療保険を掛けて居る事
* スペインが結んでいる相互協定で入国拒否の対象者でない事
* 本人及び家族を扶養するに十分な財務上の能力がある事
* 手続きの為の手数料を支払う事

そのためには事前に管轄官庁から事業化計画を承認して貰う事が必要である。
革新的な事業計画でスペイン経済上特に利益があると認められる必要がある。
そのためには下記の点が調査の対象となる:

a) 雇用創出
b) 本人の履歴
c) 事業計画
d) スペイン経済に付加価値を生み出すか、革新的かどうか、投資の機会を生むかどうか(第70条)

 

 
この起業家用ビザを手続きするにあたり一番重要なのがこの企業化計画書 Feasible Study(FS) の作成である。
その信憑性、実現性を説得できる内容が盛込まれている事が重要だ。

法律には書かれていないが今までの経験では通常は下記の内容を盛込む必要があろう:

A. 事業内容:他と差別化出来る事が可能か
B. 実績
C. 雇用創出数及び職種別の内訳
D. 場所:例えばマドリードなら何故マドリードなのか
E. 経済的な効果
F. 販促の方法
G. 出資者(創業者)の履歴詳細
H. 製品あるいはサービスの紹介
I. 市場分析
J. 顧客分析
K. 資金面の分析(初期投資及びその後の資金調達方法)
L. 仕入先情報
M. 助成金の必要性
N. 許可される場合の進出形態及び資本金
O. 3〜5年の資金面のシュミレーション

 

 
起業家の規模が大きければその事業化計画の信用性も高まるがその逆に個人が起業する場合は当局を説得する情報、資料の必要性が高まろう。提出した情報について当局から追加情報の提出の要請も考えられる。専門家の力を借りてきちんとした事業計画書をスペイン語で作成する事が求められる。

因みに日本との関係で言うとこの法律第14号の労働許可で一番利用されているのは出向契約に基づく日本企業の駐在員の派遣である。
企業家用(スタートアップ)ビザの利用は、日本人の間では大変限られているのか、無いのが現実である。これは唯一説得力ある事業計画を作成できるかどうかに関わっていると言って良いであろう。

 

 
新村 嘉朗 (Yoshiro Niimura)寄稿者紹介

新村 嘉朗(ニイムラ ヨシロウ)


ニイムラ経営研究所アライアンス代表

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