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4月10日、マドリードにて「第1回 ロエベ・クラフト・プライズ」の受賞者が発表された。スペシャルセレモニーには、5大陸75ヶ国に住む20〜80代からの4,000点近い応募作品の中から選ばれた26名のファイナリストが集結。
 
ロエベ財団は、現代に生きる職人たちの芸術的価値を世に示し讃えるため、2016年に『ロエベ・クラフト・プライズ』を設立。クラフト (工芸) の重要性、その才能、ビジョン、革新への意欲が未来の新しい基準を設定するであろう優れた現役のアルチザンたちを表彰することを目指している。
 
第1回目の受賞者として選ばれたのは、ドイツの木工芸職人エルンスト・ギャンパール氏。氏にはイギリスの名女優シャーロット・ランプリングよりトロフィーと賞金5万ユーロが贈られた。

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abr2017_loewecraftprize2017_ernstgamperlエルンスト・ギャンパール【Tree of Life 2】

審査員は「この作品の正式な価値観と社会的なメッセージとの接点の探り方が素晴らしかった。この作品は美しいだけでなく、私たちにリサイクルの価値を教えてくれるオブジェである。その卓越した技量で、倒木を救い出し、自然を蘇らせるということがベースになっている。これは、スタイルとかシグネチャーといったものではなく、際立った個人としての声を育ててきた特殊な能力を持つ才能豊かな職人の作品である。」と講評。
 
嵐によって根元から折れてしまった樹齢300年を超えるオークから切り出したこの大きな木製コンテナは、木そのものの形、亀裂、割れ目などからデザインのヒントを得ている。フィリグリー(金銀線細工)の平行溝を慎重に彫ることで、表面に対するアルチザンとしての技が実証される一方、粘土、土壌、石の粉末を処理したものと木材の自然のタンニン酸とが組み合わされることで、オブジェにふさわしいオーガニックな仕上げがもたらされている。自然の不完全さにみちた彼の自然へのトリビュート作品は、倒れた木のストーリーを永遠のものにしている。

  
エルンスト・ギャンパール / Ernst Gamperl (ドイツ)
家具づくりの内弟子を経て木材旋盤加工の熟練工となった後、ドイツとイタリアに自らのスタジオをオープン。彼独自の木材に対する鑑賞力によって独特で特徴的なニッチを彫り出すことにより、その作品はヨーロッパ、アジア、アメリカで人気が高まっている。
http://www.ernst-gamperl.de

 
さらに、本来は受賞者1名のみの発表となるはずであったが、急遽、審査員特別賞を2名に贈ることが決定された。
 
abr2017_loewecraftprize2017_kojiro神代 良明【Structural Blue】
 
その一人が、日本から参加したガラス工芸職人の神代良明氏である。
審査員達は、究極的に実験的な構造であるフォルムを実現するために素材を混ぜ合わせることにより、リスクやイノベーションを受け入れるという彼のリサーチ力を高く評価した。「素材と人間との関係を熟考しながら、このガラスボウルは実験のトロフィーとなっています。ガラス粉末と酸化銅粉末を混ぜ合わせ、焼成工程が溶けたガラスと加熱した鉱物から発生するガスとの独特な相互作用を生み出しています。その結果、はかない光沢が生まれ、それが永続する形の上に枯れた質感を作り出しています。ガラスの繊細さによって作り出された陶器の強さを伝えることで、深みのあるブルーのボウルがラディカルで、深遠で、神々しいまでの意思表示をしています。」

 
神代良明 / Yoshiaki Kojiro (日本)
1968年千葉県生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業後、東京ガラス工芸研究所研究科でアルチザンとしての技に磨きをかけます。彼のガラス工芸に対する統制の取れたアプローチには、自国の文化と研究に対する彼のひたむきさが吹き込まれている。
http://www.yoshiaki-kojiro.com

 

 
abr2017_loewecraftprize2017_artesaniaspanikuaアステサニアス・パニクア【Tata Curiata】

そしてもう1組は、メキシコ・ミチョアカン地区の先住民プレペチャ族の末裔であるこの家族の工房アステサニアス・パニクア(Artesanías Panikua)。審査員たちは「理論的には説明のつかない気持ちの高まりを感じさせることができる作品に贈られた。また、感情的なインパクトとは別に、この作品は受け継がれてきた文化遺産全体を物語り、芸術的な志を持ったクラフトマンシップというものには材料の限界というものがなく、藁もゴールドのように重要なものになれることを実証しています。」と語る。
 
アステサニアス・パニクア / Artesanías Panikua (メキシコ)
メキシコ・ミチョアカン地区の先住民プレペチャ族の末裔の家族工房では祖先伝来のクラフトマンシップと神話がすべての作品へと織り上げられる。農作業と魚釣りの合間に、アントニオ・コルネリオさんと妻のヴェロニカさん、そして2人の娘は、自分たちの家族をはるかに超えるレガシーを発展させている。何百本もの小麦繊維の撚糸がまとめて織られ、戦いと火を意味するプレペチャ族の太陽神を作り上げている。星とさえずる小鳥の2つのモチーフで飾られることで、クラフトと古代の農業技術とのつながりも示されている。複雑にデザインされた作品は、知識や技術が世代を超えて伝えられてきたこと、昔からのやり方が途切れることなく守り育てられてきたことを実証している。
 

 

 
審査員の一人、日本人デザイナーであり日本民藝館館長の深澤直人氏は「ラディカルなテクニックからハンドクラフト作品の美しさ、素材への畏敬の念まで、かなりのコントラストを選びました。受賞した3作品はいずれも伝統的な職人技というものを再評価するきっかけになるものだと思います。」と講評を述べた。

 
第1回 ロエベ・クラフト・プライズにて、ファイナリスト26名中3名が日本人、内1名が審査員特別賞受賞という、日本の職人たちによる工芸技術の素晴らしさや斬新さ、その才能が世界に認めらたという結果をもたらした。
 
受賞者の作品を含む全ファイナリストの作品は、2017年4月11日より5月10日までマドリードのColegio Oficial de Arquitectos de Madrid (COAM) にて一般公開展示されている。(12:00〜20:00 / 入場無料)
その後、2017年5月30日~6月6日ニューヨークのチャンバー・ギャラリー(Chamber Gallery)、2017年11月には日本の東京にて、さらに2018年2月22日~26日ロンドンのサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)と巡回展示される。
 
第2回ロエベ・クラフト・プライズの応募は2017年6月にスタートし、受賞者は2018年パリで発表されることとなる。

 
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左より、漆・木工芸 井川健氏、ガラス工芸 神代良明氏、木工芸 中川周士氏

 
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中川 周士 (Shuji Nakagawa)
1968年生まれ。伝統的な京都の木工芸を受け継ぐ職人であり作家。有名な桶職人である父・清司氏の手ほどきを受ける。京都精華大学造形学部立体造形卒。
作品:Big Trays of parquetry
http://www.nakagawa-mokkougei.com

 
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井川 健 (Takeshi Igawa)
1980年生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授。
作品:Line and Surface: VI
https://www.art.saga-u.ac.jp

 

 

Mayo2016_FundacionLoewe_Portalロエベ・クラフト・プライズ 2017

 
マドリードでの展示会
開催期間:2017年4月11日〜5月10日 12:00〜20:00
会場:Colegio Oficial de Arquitectos de Madrid (COAM)
住所:Calle de Hortaleza, Madrid
入場無料


 
ロエベ・クラフト・プライズ日本語公式サイト:http://loewecraftprize.com/jp
 
ロエベ日本語公式サイト:http://www.loewe.com/jp_ja/
LINE日本語公式サイト:https://page.line.me/loewe
 
LOEWE
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情報元:ロエベ・ジャパン プレスリリース (PR TIMES)