エスハポンインタビュー | 在スペイン日本国特命全権大使 山内弘志

大きな変貌を遂げたスペイン社会への率直な印象から、国際社会の転換点における日西関係の重要性、経済・文化・人的交流の広がり、そして未来への展望まで――。長時間にわたるインタビューを通じて、山内大使は、日本とスペインが築いてきた信頼と、これからの可能性について丁寧に語ってくれた。
――山内大使にとりましては、今回、36年ぶりのスペイン勤務と伺っております。スペインという国に対して、ご着任前から抱いておられた印象と、実際に来られてみて発見されたことなどについてお聞かせください。
外務省に入ってから、スペイン語の研修をスペインで行って以来の、スペインでの勤務ということになります。当時入省後のスペイン研修のすぐ後にアルゼンチンに赴任しましたが、今回はアルゼンチンからスペインに赴任するということになったわけですから、ちょうど当時とは逆の形で来ている、ということになります。
最初に研修でスペインに滞在した頃は、スペインの民主化が1982年、EU加盟が1986年と、いずれも間もない時期でした。そうした時代背景もあり、不安とともに希望を胸に抱いているスペインの人々の姿を見ることができた、という記憶があります。
もう一つ印象に残っているのは、当時のマドリードは、まだ「スペインの一地方都市」という雰囲気が強かったということです。街も今ほど綺麗ではなく、治安についても一部地域はあまり良くないので行かない方がいい、というような話を聞いた記憶があります。
交通インフラについても、現在とは比べものになりませんでした。私はバラハス空港に到着してから、サンタンデールで行われる夏期講習に出席するために移動したのですが、大きなスーツケースを抱え、不安に思いながら長時間の列車移動をしたことを今でもよく覚えています。
それと比べますと、今回改めてスペインに赴任して感じるのは、インフラが非常に立派になり、街もとても綺麗になっているということです。その変化の大きさには、本当に驚かされました。
――特に印象に残っているインフラの進化として、何か具体的なものはございますか。
やはり高速道路ですね。市内周辺の高速道路や道路網が非常によく整備されていると感じました。昔は一本道だったところが、今では2車線の非常に立派な道路になっていて、しかも全体的に新しい。これは本当に素晴らしいことだと思いました。
――スペインへのご赴任にあたり、まず最優先で取り組みたいとお考えのテーマは何でしょうか。政治、経済、文化、人的交流など、優先順位やその理由も含めてお聞かせください。
まずは、やはりハイレベルでの交流の活性化に取り組んでいきたいと考えております。ご存じのとおり、現在の国際社会は歴史的な転換点にあると言われていますが、そうした状況の中で、共通の価値を有する戦略的パートナーである日本とスペインの協力の必要性は非常に高まっていると感じています。
今日の国際的な課題も含めて考えますと、両国が単に二国間関係を強化するというだけでなく、国際社会が直面するさまざまな課題に対し、責任ある一員として共に取り組んでいくことが重要です。そのためにも、ハイレベルでの対話がより一層活性化されることは、極めて大切だと考えています。
日本において、スペインに対する好感度は非常に高いものがあります。これは逆も同様だと思いますが、日本では特に「スペイン」と聞くと、サッカーやフラメンコといった伝統的なイメージが強いのが現状です。そうしたイメージに加えて、これまであまり知られてこなかった新しいスペインの姿を、日本側にしっかりと伝えていきたいと考えています。
同時に、スペインという国が国際社会の中で持つ重要性についても、より理解を深めてもらう必要があると思っています。
「4つの顔」を持つ国・スペイン
私がよく申し上げているのは、スペインは「4つの顔を持つ国」であるということです。これは、欧州の中でも非常に珍しい、ある意味でユニークな立場だと思います。
まず言うまでもなく、スペインはEUの中で第4位の経済規模と人口を有する大国です。しかし、それだけではありません。スペインは、地中海地域、中南米、アフリカと、歴史的・伝統的に深いつながりを持つ国でもあります。
このような多面的な側面を持つスペインは、現下の国際情勢の中で、日本にとってやや手薄になりがちな地域を、共にカバーできる可能性を持っているのではないかと考えています。そうした意味でも、スペインの持つさまざまな側面を日本としてどのように活用し、この複雑な国際環境の中でどのように舵取りをしていくかということが、これからの大きな課題になると思っています。繰り返しになりますが、そのためにもハイレベルでの対話は非常に重要です。
親日感情と在留邦人の存在
同時に、スペインに来て強く感じているのは、スペインの方々が非常に親日的で、日本を好きな方がとても多いということです。これは、在留邦人の皆様が日頃からスペインの方々との接触を通じて信頼を勝ち得てこられた結果であり、本当に重要なことだと感じています。
また、漫画やアニメといった日本のソフトパワーの影響もあり、スペインにおける対日好感度は、現在かなり高い水準にあるのではないかと思います。
皆様の日頃からの努力や、長年にわたって築かれてきた信頼によって得られたこの状況を、外交的にもできるだけ有効に活用していきたいと考えていますし、在留邦人の皆様にはこの場を借りて改めて感謝を申し上げたいと思います。




