第3章:サッカーとフラメンコ ――文化への親しみ、そして経済協力の広がり

 
――少し話題が変わりますが、大使はサッカーやフラメンコはお好きですか。

好きですね。もちろん、どちらも専門的に詳しいというほどではありませんが、サッカーの方がまだ少し詳しいと思います。以前赴任していたアルゼンチンもサッカーが非常に盛んな国でしたので、その影響もあって、どちらかと言えばサッカーの方が得意かな、という感じです。フラメンコについては、まだまだ勉強しなければいけないと思っています。

 
経済面での日西協力 ――成長の可能性をどう見るか
 
――経済面での日西協力は、再生可能エネルギー、自動車、観光、食、宇宙、バイオなど、非常に多くの分野に及んでいると思います。大使からご覧になって、今後特に伸びていくと考えられる分野はどこでしょうか。また、その理由も教えていただけますでしょうか。
 
どの分野が一番伸びるかというのは、正直なところなかなか予測が難しい部分もあります。ただ、先ほど申し上げた点とも重なりますが、日本としては、スペインの持っている強みをどのように活用して自国の成長につなげていくか、という視点が非常に重要だと思っています。
 
スペインは、EUの中でも例外的に高い経済成長率を誇っている国です。そうしたスペインの活力を、日本としてどう取り込んでいくか。その中で、合理的なパートナーシップを築いていくことは、非常に意味のあることだと考えています。
 
そうした観点から見ますと、スペイン各地の地方特性を生かした協力関係も非常に重要だと思います。例えば、製造業が比較的強いバスク地方、伝統的に産業が集積しているカタルーニャ地方、また日本と気候的にやや似ていて日本人にとって親しみやすいガリシア地方など、それぞれに特徴があります。こうした地域の特性を生かした協力の形は、今後さらに広がっていくのではないかと思っています。

  
注目分野1:科学技術と核融合エネルギー
 
こうした枠組みの中で、スペインが比較的強みを持っている分野としては、再生可能エネルギー、自動車、観光、食、宇宙、バイオなどが挙げられると思います。正直に申し上げますと、これらの分野はいずれも今後伸びていく可能性がありどれか一つに絞るのは難しいのですが、いくつか特に注目している点があります。
 
その一つが、科学技術分野での協力です。科学技術というと、一般的にはあまりスペインのイメージと結びつかないかもしれませんが、実際には重要な取り組みが進んでいます。
 
例えば、核融合に関する国際的な協力として核融合中性子源計画(IFMIF-DONES)があり、核融合関連施設がグラナダに設置される予定です。現在、建設が始まっている段階だと思いますが、昨年日本もこの計画に参画し日本とスペインの間でも協力が進んでいます。
 
私が着任して最初に参加した公式行事も、まさにこの分野に関するものでした。日本からは量子科学技術研究開発機構(QST)の小安理事長が来訪され、多国間国際DONES協定(MIDA)調印式に出席され、署名が行われました。核融合エネルギーは、日本においても将来の重要なエネルギー源として位置づけられています。日本は独自のエネルギー資源が限られている国ですので、この分野で日本とスペインが協力するということは、今後さらに注目されていくのではないかと思います。

  
注目分野2:自動車・再生可能エネルギー・地域連携
 
自動車分野についても、非常に大きな動きがあります。2025年12月、欧州委員会が2035年から原則禁止するとしていたエンジン車の新車販売に関する政策を見直すという方向性を示しました。これは、ハイブリッド技術に強みを持つ日本の自動車産業にとって、追い風になる可能性があります。
 
再生可能エネルギー分野では、興味深い点として、スペイン企業が日本に投資している例もあります。イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン株式会社が、秋田県沖の洋上風力発電事業に投資しており、単に日本側がスペインに協力するだけでなく、スペイン側からも日本に対して先進分野での協力が行われています。
 
また、最近では、福島県の内堀知事が来西し、バスク州のプラダレス首相と既存の協力枠組みであった再生可能エネルギー分野に加えて、デジタルや食といった新たな協力分野を加えた連携覚書を締結しました。こうした地方自治体レベルでの連携も、今後の協力の方向性を示す重要な動きだと考えています。

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第4章:観光・食・宇宙 ――「意外なつながり」が示す日西協力の広がり

 
――経済協力のお話の中でも、観光や食、宇宙分野など、さまざまな分野での協力が進んでいることが印象的です。

観光分野では、よく知られている例として、熊野古道とガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を軸とした協力があります。これは単なる観光促進にとどまらず、文化や精神性も含めた交流として、大変意義のある取り組みだと考えています。
 
また、食の分野でも、和食とスペイン料理のコラボレーションといった形で、観光とも結びついた協力が進んでいます。食文化は非常に分かりやすく、人々の距離を縮める力を持っていますので、こうした取り組みは今後も大切にしていきたいと思っています。

 
宇宙・天文分野における協力
 
意外に思われるかもしれませんが、宇宙分野についても日西の間には既にさまざまな協力関係があります。例えば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と契約した衛星監視用アンテナが、グラン・カナリア島のスペイン国立航空宇宙技術研究所(INTA)に設置されています。また、東京大学が管理する天体望遠鏡がテネリフェ島に設置されているなど、天文観測の分野でも協力が進んでいます。
 
こうした技術面での協力を見ると、スペインの持つ意外な側面、そして日本との補完関係の可能性を改めて感じます。そうした側面をできるだけ多くの方に知っていただき、今後さらに協力を推進していきたいと考えています。

 
2027年横浜国際園芸博覧会への期待
 
最後に一点申し上げたいのが、2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会についてです。この博覧会は、園芸、農業、食文化、持続可能性など、非常に幅広いテーマを扱う国際的なイベントであり、多くの日本人や日本企業にとって、スペインの魅力を改めて体感していただく良い機会になると期待しています。
 
観光の観点から見ても大きな意味を持つイベントになると思いますので、園芸博の成功に向けて、スペイン国内での機運醸成にも力を入れていきたいと考えています。

 
日本酒とスペイン食材 ――食を通じた相互理解
 
――食のお話が出ましたが、大使公邸での日本酒・日本食イベントや、マドリード・フシオンでの日本食と酒のセミナーについても伺っています。

意外というわけでもないかもしれませんが、例えばスペインのチーズと日本酒の組み合わせは非常に相性が良いと感じています。また、スペインの伝統料理と日本酒の組み合わせもとても美味しく、ぜひ多くのスペインの方々に体験していただきたいと思っています。そうした思いから、スペインの食材と日本酒のマリアージュを紹介する事業を行っていますし、今後も継続していきたいと考えています。同時に、逆の方向として、スペインワインと日本食の組み合わせについても取り組んでいきたいと考えています。
 
食を通じた日西の相互交流をさらに進めていきたいという思いがありますので、ぜひご協力をお願いしたいと思います。

 
日本酒をスペイン社会へ広げるために
 
――スペインの料理店ではまだ日本酒を目にする機会が少ないですね。

おっしゃる通り、日本では居酒屋に行けばワインが置いてあることも珍しくありませんが、スペインではスペイン料理店で日本酒を見かけることは、まだ多くはありません。
 
いきなり広く普及させるのは難しい面もありますが、まずは高級店からオンリストしてもらい、そこを通じて日本酒の素晴らしさを伝えていければと考えています。大使館としても、その一助を担うことができればと思っています。

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