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マドリードとバレンシアでのコンサートを控えた4月1日、国際交流基金マドリード日本文化センターとカサ・アシアの主催にて『吉田健一 レクチャー&デモンストレーション』がカサ・アシア内で開催され、三味線の日本伝来の歴史やその特徴、三味線特有の楽器の構造、吉田氏の経歴などについて、演奏を交えながら説明し、スペインにて新たな三味線ファンを獲得した。
 

 
津軽三味線は、もとは青森県津軽地方の民謡伴奏に用いられたことから始まった。
やがて、ボサマ(男性視覚障害者)が門付(人家の門先に立って芸を見せ、報酬を受けること)で、生きるために人とは違う演奏法を各奏者が生み出し、発展させいくつもの流派に分かれていった。
そこから生まれた、豪快にバチを叩きつけて弾く「叩き三味線」も人より目立ち注目を集めるための津軽三味線独特の奏法である。

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吉田氏は幼少の頃、父の教えにより兄・良一郎と共に津軽三味線の道へと入る。今でこそ、吉田兄弟や他の若い演奏者、または津軽三味線を題材とした漫画やインターネットの普及により、津軽三味線は多くの人に知られる存在となったが、吉田氏が始めた頃は、「年寄りのやること」「古臭い」というイメージが付きまとい、同級生に対し恥ずかしい気持ちもあったと言う。
 
それでも続けた三味線の世界で頭角を現しはじめた兄弟は、やがて全国大会へ参加するようになり、様々なコンクールで優勝し、数多くの賞を受賞することとなる。

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日本では小中学校に邦楽教育を導入しようという動きから、文部省による「日本の伝統音楽重視」の方針が打ち出され、2002年からの中学校での「和楽器必修」へと結びついていく。
このことが吉田兄弟を大きく変えた。津軽三味線奏者として吉田兄弟は全国津々浦々の中学校を巡ることとなる。それをきっかけに、若い世代の人たちや世界の人々にもっと津軽三味線を聞いてもらいたい、世界に出たい、という気持ちが芽生えた。
 
兄弟は、海外へと目を向け始める。伝統ある津軽民謡だけにとどまらず、作曲も手がけ、独自の世界を作り始める。
 
「和楽器だけの音楽で “和の格好よさ” を追求し、若い人たちに伝えたい」ことから始まった、津軽三味線・尺八・箏・太鼓によるユニット『WASABI』は兄・良一郎が取り組む新しい試みだ。
 
そして弟・健一氏は、新しい何かを創り出そうと、普段交わることのない他流派の若手を集め、次世代の津軽三味線集団を誕生させるという志から『疾風 (HAYATE)』を誕生させ活動している。

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伝統を重んじる三味線の世界から一歩踏み出し、津軽三味線の革命児となり旋風を巻き起こした兄弟に対し、当時少なからず批判もあったという。しかし兄弟は、「今」求められている津軽三味線の音を常に模索し、世界で体験したことをもとに様々なジャンルとのコラボレーションも行っている。
 
ロックバンドMONKEY MAJIK(モンキー・マジック)とのコラボレーションでは「現代のロック × 伝統の津軽三味線」、NARUTO連載完結記念ナルト展ではオープニングテーマ曲「PRANA」を担当し「漫画 × 津軽三味線」を、古さを感じさせずに昔からの和音を今に伝え、格好良くもみごとな調和を奏でている。

Youtube:yoshidabrotherstv / 吉田兄弟 Yoshida Brothers x Monkey Majik – Change
 

 
吉田健一氏は3月から5月にかけて、スペイン・イギリス等で、文化庁文化交流使として世界に紹介したい日本文化のひとつとして、和楽器「津軽三味線」の紹介とその理解の深化に繋がる活動を行っていく。
今回のレクチャー&デモンストレーションや、コンサートに続き、5月にはバルセロナのESMUC (Escola Superior de Música de Catalunya) にて、ESMUCの学生を対象とした津軽三味線の無料ワークショップを開催する予定。ヨーロッパでは初となる津軽三味線のワークショップ開催について、同氏は「スペインは他文化への理解が深く、日本文化を発信する地としてすばらしい。」と語った。

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吉田 健一 / KENICHI YOSHIDA


1979年12月16日生 北海道登別市出身
5歳より三味線を始める。
津軽三味線の全国大会で数々の賞を受賞し、頭角を現す。
兄・良一郎と共に吉田兄弟として1999年アルバム「いぶき」でメジャーデビュー。
邦楽界では異例のヒットを記録し、現在まで13枚のアルバム他を発表。
2003年の全米デビュー以降、世界各国(アジア・北米・オセアニア・ヨーロッパでの活動や、国内外問わず様々なアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。
またソロワークとして、昨年9月『ファースト・ソロライブ・ツァー』(Billboard Live TOKYO / NAGOYA Blue Note / Billboard Live OSAKA)を成功させ、若手トップクラスの奏者が集結した津軽三味線集団 疾風のプロデュースや、平成27年度文化庁文化交流使に任命される等、活動の幅を広げ、日本の伝統芸能の枠を超えてワールドワイドに活躍できるアーティストとして期待されている。

吉田健一
Twitter:https://twitter.com/kenichi_shami

吉田兄弟
オフィシャルサイト:http://www.yoshida-brothers.jp
Facebook:https://www.facebook.com/yoshidakyodai
Twitter:https://twitter.com/yoshida_kyodai

 
国際交流基金マドリード日本文化センター:http://www.fundacionjapon.es
カサ・アシア:http://www.casaasia.es